「原因と結果」の経済学 (2017) 中室牧子・津川友介

主題:因果推論の考え方

☆因果推論とは

「因果関係なのか相関関係なのか」を正しく見分けるための方法論
因果関係とは、2つの事柄のうちどちらかが原因でどちらかが結果である状態。
相関関係とは、2つの事柄に関係があるものの、原因と結果の関係にはない状態。


☆因果関係とは言えない3つのパターン

まったくの偶然である。
交絡因子(原因と結果の両方に影響を与える第3の変数)が存在する。
逆の因果関係である。


☆因果推論の通底目標

因果関係の証明には事実と反事実「仮にOOしていなかったらどうなるか」の比較が必要。
だが、事実は観察できるが、反事実は観察できない。
しかし、「比較可能なグループを作り出し、反事実を最もらしい値で置き換えること」はできる。これが因果推論の考え方で通底している目標である。


☆因果推論の代表的な5つの手法

1.メタアナリシス:複数の研究成果を1つにまとめて、全体としてどのような関係があるのかを明らかにする研究手法。

2.ランダム化比較試験:研究対象集団を介入群(介入を受けるグループ)と対照群(受けないグループ)の2つに”ランダムに割り付け”て比較することで、対称群を反事実として用いて因果関係を検証する手法。

3.自然実験:外生的ショック(法律や制度の変更、自然災害など)によって研究対象が介入群と対照群の2つに”自然と分かれた”状況を利用して、「あたかもランダム化比較試験のような状況」を見出し因果関係を検証する手法。

4.疑似実験:観察データと統計的な手法を用いて、「あたかもランダム化比較試験のような状況」を作り出し因果関係を検証する手法。

5.回帰分析:ありもののデータで因果関係を検証する手法。


※エビデンスレベル

メタアナリシス>ランダム化比較試験>自然実験&疑似実験>回帰分析


※「4.疑似実験」の代表的な4つの手法

4.1.差の差分析:介入軍と対照群の結果の差とそれぞれの前後の結果の差を取って比較することでトレンドによる影響を取り除く手法。
必要条件は、①トレンドが同じで比較可能である(平行である)こと、②介入と同じタイミングで結果に影響を与える別の変化が介入群と対照群に別々に生じていないこと、の2つ。

4.2.操作変数法:操作変数(原因に影響を与えることを通じてしか結果に影響を与えない変数)を用いることで、介入群と対照群を比較可能にする手法。

必要条件は、①操作変数が結果に直接影響を与えないこと、②操作変数と結果の両方に影響を与える第四の変数が存在しないこと、の2つ。

4.3.回帰不連続デザイン:恣意的に決定されたカットオフ値の両サイドで、介入群と対照群が分かれる状況を利用して因果効果を推定する手法。
必要条件は、カットオフ値の周辺で結果に影響を与えるような他のイベントが起きていないこと。

4.4.マッチング法:結果に影響を与えるような共変量を用いて、対称群の中から介入軍によく似たサンプルをマッチさせて比較する手法。複数の共変量がある場合は、プロペンシンシティ・スコア(複数の共変量をまとめて一つの得点にしたもの)を用いてマッチングさせることもある。

必要条件は、結果に影響を与えるような共変量がすべて観察可能であること。


☆因果推論の5ステップ

1) 原因は何か?
2) 結果は何か?
3) まったくの偶然でないか?交絡因子が存在しないか?逆の因果関係でないか?
4) 反事実をどう作るか?
5) 比較のためにどう調整するか?

以上

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