「生産性」(2016) 伊賀泰代

主張:知識産業の生産性を高めるために革新が必要。


問題:日本の知識産業における生産性の低さ

この問題の主な要因は次の4つである。

要因1:生産性という概念認識の狭義性

多くの日本企業で「生産性向上=改善による投入資源の削減」と誤認されており、「付加価値額の向上」や「革新」によって生産性向上を目指す意識が低くなっている。

要因2:量を重視する文化の存在

多くの日本企業では「競争に勝つにはより長く働く必要がある」という労働投入型の発想が根付いており、生産性の軽視につながっている。

要因3:超高業績人材の早期選抜への消極性

多くの日本企業は、成長機会を提供することの価値を過小評価し人事評価の主眼を育成ではなく昇格や査定に置いているため、超高業績人材を早期選抜することに消極的になってしまっている。そのため、超高業績人材の潜在能力を存分に活用しきれずに、組織の生産性を大きく向上させる機会を逃している。

要因4:低業績中高年人材の再教育への消極性

多くの日本企業は、本人に屈辱を感じさせてしまうという配慮から、低業績中高年人材への教育機会の提供に消極的になっている。それがむしろ、低業績中高年人材に対する期待の低さとして伝わってしまい、さらに社内の士気の低下にもつながるので、多くの人材の生産性を低下させている。


解決策:革新と改善による投入資源の削減と付加価値額の増大

「改善」だけでなく「革新」によって、「投入資源の削減」と「付加価値額」の増大を両立し生産性を向上させる。
そのための指針は、次の6つである。

指針1:革新のための時間の創出と意欲の醸成

次の4段階のプロセスサイクルのように「革新」のための時間を創出することで、大幅な生産性向上が実現できる。①改善による生産性向上、②余裕時間の創出、③余裕時間を革新のために投資、④革新による大幅な生産性向上。
また、「何としても生産性を向上したい」という意欲を醸成することで、「現状の問題認識」と「問題解決への強い希求」を生み、「革新」による生産性向上につながる。

指針2:生産性の変化率に基づく評価

人やチームの評価は、その生産性すなわち「成果/投資資源」の、昨年からの変化率で評価する。そして、結果的な生産性の向上度を重視した上で、その過程での「革新」や「改善」への挑戦度も評価に加えてランク付けをする。

指針3:超高業績人材のための特別な機会提供

超高業績人材に対しては、平均的な人材向けの制度は適用せずに、挑戦的な仕事を与え社外の超高業績人材の姿を見せて刺激を与えることで、潜在能力を存分に発揮させ組織の生産性を大きく向上させる。

指針4:低業績中高年人材の再教育とフィードバック

低業績中高年人材に対しても、再教育のための研修を受講させたり成長を支援するための詳細で具体的なフィードバックを与えたりすることで、長期的に多数の人材の生産性向上につなげる。

指針5:チーム全体の業務の可視化・形式知化

ストップウォッチを用いるなどして定量的に作業時間を把握しチーム全体での作業を可視化し具体的に共有することで、不要な業務を定期的に排除し業務のノウハウを言語化された形式知として蓄積することでチーム全体の生産性を高める。

指針6:研修・資料作成・会議の生産性向上

研修ではロールプレイングを積極的に取り入れて、具体的な話し方の練習・フィードバック共有・相手側の立場理解などを通して、チーム内で形式知を共有する。

資料作成では、明確なアウトプットイメージに基づきブランク資料を作ってから情報収集に取り掛かる。ただし、公開量の少ない情報やブランク資料に含まれない重要な情報を逃さないよう意識し、必要であればブランク資料は途中でつくりなおす。

会議では、はじめに必ずその会議での達成目標を明確にさせ、基本的に資料は説明させずに各自で読ませるようにする。また、意思決定に至れない場合は常に「データが足りないのかロジックが足りないのか」を確認する。

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