「ウォー・フォー・タレント」(2002) エド・マイケルズ、ヘレン・ハンドフィールド=ジョーンズ、ベス・アクセルロッド
主張:優れた経営管理能力を持つ人材を、確保し続けた企業が勝つ。
問題:タレント確保競争の激化
企業は優れた経営管理能力を持つ人材(:タレント)を確保し続けることに今後ますます苦戦する。この問題の要因は、次の3つである。
要因1:優秀な人材確保競争の激化
主要産業が工業から情報に移行
→知識労働者を必要とする仕事が増加
→労働生産性の個人差が拡大
→優秀な人材の需要増加
→優秀な人材確保競争の激化
→タレント確保競争激化 (∵タレントは優秀な人材の中から生まれる)
要因2:優れた経営管理能力の需要増加
グローバリゼーション、規制緩和、テクノロジーの急激な進歩
→ほとんどの産業の競争原理が変化
→企業が前例のない課題に直面する機会の増加
→企業にとって優れた経営管理能力の需要増加
→タレント確保競争激化
要因3:転職障壁の低下による平均勤続年数の低下
転職者数の増加
→転職環境の充実化
→心理的・環境的な転職障壁の低下
→平均勤続年数の低下
→タレント確保競争激化
解決策:全力で戦略的に、魅了あるいは開発
人事とCEOだけでなく全社的に協力し、タレントを確保し続けられる論理と仕組みを構築する。具体的には、以下の5つの指針が鍵となる。
指針1:リーダー全員の確信
優れた経営管理能力を持つ人材を獲得、育成、留保することが業績向上に結びつくのだと、社内のあらゆるリーダーに確信させる。
そして、社内のあらゆるリーダーは、次の6つの行動を取るべきである。
①人材要件の決定、②人材評価への介入、③簡素で徹底的な評価プロセスの実施、④タレント重要性認識の浸透、⑤人材への大胆な投資、⑥人材の実力への責任負担。
指針2:タレントへの訴求価値の確立
タレントがその企業で働き続ける明確な理由を定義し、それを発展させ続ける。
そして、タレントは主に次の4つの価値を求めている。
①新しい目標と刺激的な仕事、②水平的・流動的・柔軟な組織、③5年後までの展望・生み出した価値と結びつく報酬、④違った職種を多く経験すること。
指針3:採用戦略の再構築
新しい技術と新しいものの見方で、新たな人材供給方法を積極的に開拓し続ける。
そして、詳細には次の7つの考え方が大切である。
①すべての職位に外からの人材を入れる、②常に優秀な人材を追跡する、③できるだけ多様な人材獲得源にあたる、④求職者でない人材にもアプローチする方法を探す、⑤望ましい人材を獲得するためなら報酬のルールも破る、⑥採用とはふるいわけであり自社の売り込みでもある、⑦人材のタイプによってそれぞれ違った採用戦略を構築する。
指針4:リーダー全員によるタレント開発
社内のあらゆるリーダーが、全力投球が要求される仕事への配置と指導、方向づけをすることによって、タレントを育成し能力を発揮させる。
そして、効果的な人材配置をするには、次の2つのアプローチがある。
①チェスボードアプローチ:CEOと人材育成リーダーが、チェスの駒を動かすように組織横断的に最も効果的な人材配置を考える。②オープンマーケットアプローチ:従業員と採用担当マネージャーの両方がお互いに働きかける。
指針5:高業績者への重点的な投資
従業員の実力差を認め、報酬、チャンス、投資に差をつける。
そして、高業績者を特定するための評価プロセスでは、次の6つの要素が求められる。
①ビジネス戦略から出発すること、②個々の従業員を厳格に評価すること、③基準に則り業績をランク分けすること、④各従業員に対しての具体的な行動計画を作成すること、⑤チーム全体で評価・行動計画作成をすること、⑥あらゆるリーダーが責任を持ちフォローアップを行うこと。
原著: The War for Talent (2001)
訳者:渡会圭子
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